『ウルトラマンUSA』(ウルトラマンユーエスエー)は、アメリカのハンナ・バーベラ・プロダクションと日本の円谷プロダクションが製作したアニメ作品。アニメーションの実制作はスタジオ・ザインと葦プロダクション(現:プロダクション リード)が請け負った。英題『ULTRAMAN THE ADVENTURE BEGINS』。アメリカでは、1987年にテレビ放送され、日本では「ウルトラマン大会(フェスティバル)」と題して、1989年4月28日に劇場公開された。同時上映は『ウルトラマン 恐怖のルート87』『ウルトラマンA 大蟻超獣対ウルトラ兄弟』。
概要[]
M78星雲ソーキン星の爆発によって地球に飛来したソーキン・モンスターを追ってやってきた3人のウルトラ戦士が、アメリカ空軍のアクロバットチーム「フライング・エンジェルス」のメンバーと一心同体となり、「ウルトラフォース」として地球の各地に落下したソーキン・モンスターに戦いを挑むストーリー。
元はアメリカ国内向けTVシリーズのパイロット版として製作された作品だが、シリーズ化は実現していない。アニメのウルトラマンは、『キッズ』を除けば『ザ☆ウルトラマン』以来10年ぶりの制作となる。
スコットは『ウルトラQ』の13話で最初にチルソナイトを発見する子供たちの一人として登場した事もある古谷徹、クーパー将軍には『ウルトラマン』のザラブ星人の声として知られる青野武と過去のウルトラシリーズに縁がある声優を起用している。
主人公は「ウルトラフォース」のパイロット、チャック、スコット、ベスの3人で、それぞれウルトラマンチャック、ウルトラマンスコット、ウルトラウーマンベスに変身する。変身の際には『帰ってきたウルトラマン』と同様、特に用具は用いない。彼らはM78星雲から来たヒーローであり、設定上は他の「ウルトラ兄弟」たちも存在する世界が舞台になっているが本編中では語られない。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では当初は登場予定は無かったが「設定上さしさわりないなら出したい」というスタッフの意向で[1]、宇宙警備隊の隊員としての姿が描かれた。
戦士として男性のウルトラマンと肩を並べて戦う「ウルトラウーマン」の登場やキスシーンなど、これまでのウルトラシリーズに無かった試みも多く取り入れられた。円谷皐は「(私が)ウルトラマンを男女3人にしたのですが、熱烈なファンのいる日本でなら抵抗があったでしょう」と語っている[2]。
当初ハンナ・バーベラ側から提示されたデザインでは、ウルトラマンがマントを付けていた。これは、アメリカでは「マントも付けずに空を飛ぶヒーロー」という概念が理解できなかったからだと言われている[3]。日米間で何度も打ち合わせを続け、ようやく決定稿のデザインに落ち着いたという。
尚、国内公開は他の劇場版ウルトラシリーズの多くを手がけた松竹ではなく東宝の配給である。
ウルトラマン[]
ウルトラマンスコット[]
ソーキン・モンスターを追って地球へやってきたM78星雲からやってきたウルトラ戦士の一人。アメリカ空軍のアクロバット飛行チーム「フライングエンジェルス」のスコット・マスターソン大尉に宿って一心同体となり、当初は彼自身が危機に陥ると変身できたが、中盤では自らの意思で変身できるようにもなった。腹部に青色の星型をしたバックルを持ち、太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。ガルバラードを発電所に投げつける等、やや荒っぽい戦い方を得意とする。
- 身長:82メートル
- 体重:6万4千トン
- 飛行速度:マッハ24
必殺技[]
- グラニウム光線
- 両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技だが、単独で使用したのはスコットのみである。3人で同時に発射すればウルトラシンクロビームとなって威力が増す。
- ウルトラ・エナジー・ボール
- 腰のバックルから発するエネルギーを凝縮して投げつける。ガルバラードの本体イームにダメージを与えた。
- ウルトラスライサー
- グラニウムエネルギーを丸ノコギリ状にして投げる技で初代ウルトラマンの八つ裂き光輪と同じである。ウルトラ・エナジー・ボールでダメージを受けたイームに2連続で投げつけて、4つに切り裂いた。それからグラニウム光線を放ち、イームを消滅させた。
- トリプルパワー
- 3人でキングマイラの3本の尻尾を掴み、投げ飛ばして太陽に突き落とした。
ウルトラマンチャック[]
ソーキン・モンスターを追って、他のウルトラチームと共に地球へやってきたウルトラ戦士の一人。スコットと同様、フライングエンジェルスの一人チャック・ギャビン大尉に宿り、一心同体となった。冷静に物事を対処し、他の2人に指示を出す指令塔に近い。太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。
- 身長:79メートル
- 体重:6万8千トン
- 飛行速度:マッハ22
必殺技[]
- グラニウム光線
- 両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技。
- ウルトラ・バブル・ビーム
- 両手先から発射する防御エネルギー光線。敵を光の球に包んで動きを封じる。球体の中に入れば、バリヤーとしても使える。ズーンを保護するためと、キングマイラを閉じ込めて太陽に投げ込むために使用。
ウルトラウーマンベス[]
ソーキン・モンスターを追って、他のウルトラチームと共に地球へやってきた女性ウルトラ戦士。他の2人と同様に、フライングエンジェルスのベス・オブライエン中尉に宿った。太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。日本で映画が公開された当時の名称は「ウルトラウーマン」[4]。
- 身長:76メートル
- 体重:5万4千トン
- 飛行速度:マッハ23
必殺技[]
- グラニウム光線
- 両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技。
- ウルトラスパウト
- 水面に立ち、周囲の水を吸い上げて、手先から噴射する技。海水に弱いグリンショックスを倒した。姿を隠したキングマイラを探すためにも使用。
ウルトラフォース[]
謎の老人ウォルター・フリーマンが結成した組織。本部はジョージア・ナショナル・ゴルフクラブの地下にあり、ラシュモア山にメカの格納庫がある。
- スコット・マスターソン
- チャック・ギャビン
- ベス・オブライエン
- スーザン・ランド
- ウォルター・フリーマン
- ロボットトリオ
- ユリシーズ、サムソン、アンディの3体のロボット。ユリシーズは本名コンボットMF842号でレーザー兵器のプロフェッショナル。サムソンはコンボットBA666号で武装システムのオーソリティー。アンディは本名ユーティロイドZQ14582号でトランスポーテーションシステムの専門家。本名が長いのでユリシーズとサムソンはスコットが、アンディはベスが命名した。3体の頭文字を並べると「USA」となる。
- マザーシップ
- ウルトラフォースの母艦。ウルトラジェットを搭載する。キングマイラ戦ではエネルギーの尽きかけていたウルトラチームに搭載していたパラボラで太陽光を集めて補充させたり、ウルトラチームを乗せて大気圏外にまで運ぶことが可能。
- ウルトラジェット
- スコットらが乗る戦闘機。ミサイルとレーザーを装備している。
ソーキン・モンスター[]
植物怪獣 グリンショックス[]
- 身長:100メートル
- 体重:3万トン
ルイジアナ州に出現したソーキン・モンスター。ニューオーリンズに向かう途中でベスと戦う。無数の触手で獲物を捕らえ、頭部の花弁の中にある溶解液で溶かしてしまう。攻撃を受けてもすぐに修復することが可能だが、植物であるため、海水(塩水)が弱点。ベスを窮地に陥れ、アンディの助言を受けたベスに海に落とされるが、残しておいた触手から再生した。最後はチャックの援護を受けたベスのウルトラスパウトで海水を浴びせられて倒された。
電磁怪獣 ガルバラード[]
サンフランシスコ州に出現したソーキン・モンスター。本体は電磁球獣イーム。スコットと戦う。
ガルバラード[]
- 身長:91.44メートル
- 体重:9万1千トン
イームが自らの体を隕石の破片で覆って誕生した怪獣。両肩にある角と尻尾から電撃を発する。スコットによって発電所に叩きつけられ、体が崩壊した。
イーム[]
- 身長:152.4メートル
- 体重:2万7千トン
ガルバラードの中から出てきた本体。発電所の電気を吸収し、スコットを窮地に陥れる。だが、ロボットトリオ(ユリシーズ、サムソン、アンディ)の機転によって危機を脱したスコットのウルトラ・エナジー・ボール、ウルトラスライサー、グラニウム光線を連続で受けて倒された。
ひょうきん子怪獣 ズーン[]
- 身長:35.05メートル
- 体重:3万5千トン
ユタ州のスキー場に出現したソーキン・モンスター。おとなしく臆病な性格で、背中にある羽で飛行することができる。このスキー場で軍に攻撃されたが、おとなしく臆病な性格で攻撃を怖がっていた。人間に危害を及ぼさないと判断したチャックによって保護され、軍から守られる。その後、チャックのウルトラ・バブル・ビームで保護されながら宇宙に運び出され、スコットによってアンドロメダ星雲のM11惑星に送られた。
超変身怪獣 キングマイラ[]
- 身長:無限に成長
- 体重:無限に成長
90分ごとに2倍の大きさへの巨大化と変身を繰り返す凶暴なソーキン・モンスター。最初はウサギに似た姿で、スーザンに拾われてウィロンと名付けられた。3人を同時に相手にした。両肩から生えた触手と口から火炎を吐き、テレポーテーションでウルトラチームやアメリカ軍を翻弄し、ウルトラチームを一時退却へ追い込んだ。だが、太陽エネルギーを得て復活したウルトラチームと再戦し、チャックのウルトラ・バブル・ビームに閉じ込められて宇宙空間へ連れ出された後、ウルトラチーム3人のトリプルパワーによって太陽に投げ込まれて消滅した。
- 映画『新世紀ウルトラマン伝説』のライブ映像に登場。
キャスト[]
- スコット・マスターソン:古谷徹/英 - マイケル・レムベック
- チャック・ギャビン:小川真司/英 - チャッド・エベレット
- ベス・オブライエン:鶴ひろみ/英 - エイドリアン・バーボー
- ユリシーズ:田の中勇
- サムソン:大竹宏
- アンディ:山田恭子
- スーザン・ランド:吉田理保子
- フィルビー博士:田中康郎
- マーク・ワトキンス:塩沢兼人
- ウォルター・フリーマン:宮内幸平/英 - ステイシー・キーチ・Sr
- クーパー将軍:青野武
- ボーディンガー大佐:佐藤正治
スタッフ[]
- 監督:日下部光雄
- 脚本:ジョン・エリック・シーワード
- キャラクターデザイン:飯村一夫
- ヒーローデザイン:吉田等
- メカニックデザイン:佐藤智彦
- モンスターデザイン:雨宮慶太、村山寛貢、杉浦千里
- 美術監督:古谷彰
- 色彩:若井喜治、小針裕子
- 撮影監督:森田俊昭
- 編集:正木直幸
- 音響監督:松浦典良
- 音楽:風戸慎介
- エグゼクティブ・プロデューサー:円谷皐、ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラ
- 制作プロデューサー:尾崎正善(スタジオ・ザイン)、江藤直行(円谷プロダクション)
- 協力:スタジオ・ザイン、葦プロダクション、龍プロダクション
- 製作:円谷プロダクション
- 主題歌:「時の中を走りぬけて」
- 作詞:阿久悠 / 作曲:都倉俊一 / 編曲:風戸慎介 / 歌:石原慎一 / コーラス:こおろぎ'73
映像ソフト化[]
ビデオ(VHS、セル・レンタル共通)とLD(セルのみ)がリリースされている。DVDは未発売。
客演作品[]
本作の主役チーム3人が客演したウルトラシリーズ作品。全て実写。
- 『新世紀ウルトラマン伝説』
- 他のウルトラ戦士と共に天空魔と戦った。
- 『新世紀2003ウルトラマン伝説 THE KING'S JUBILEE』
- ウルトラマンキングの誕生日を他のウルトラ戦士と共に祝福する。
- 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』
- 光の国の宇宙警備隊員として登場。ウルトラマンベリアルと戦ったが、ベスはベリアルの盾にされてしまい、他のウルトラ戦士と共に負けてしまったが、後にウルトラマンゼロがベリアルから「プラズマスパーク・エネルギーコア」を取り戻したことにより、全員復活する。主に同じ海外作品の『ウルトラマンG』、『ウルトラマンパワード』と一緒にいる場面が多い。
脚注[]
関連項目[]
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